与儀美容室×台所漢方 前編
対談
第一回目の対談相手は、体の内側から作り上げる美の提案者、漢方栄養士の古尾谷 奈美(ふるおや なみ)さん。現在は、古尾谷さんのお母様が創業された漢方専門店「台所漢方」にて漢方植物のブレンド処方や開発を行う傍ら、漢方カウンセラーとして多くの人々の健康と美を支えています。
老舗の事業を守り、未来へ展開していくために大切なこととは?お話を伺ってみましょう。
幼い頃から身近にあった老舗の家業
与儀:古尾谷さんが漢方の世界に入られたきっかけは何だったのでしょうか。
古尾谷:小さな頃から漢方薬局で働く母の姿を見てきたので、自分にとって漢方は身近なところにありました。
風邪をひいた時も病院に行くのではなく、漢方を処方してもらっていましたね。家業を継ぐことはあまり意識していなかったのですが、幼い私は母が調剤をしている姿を見て「やりたい!」と興味津々だったそうです。
与儀:私の幼少期と似ていますね。小さな時から身近なところに与儀美容室があって、働く母や祖母の姿を見てきました。しかし、学生時代は跡を継ぐことをあまり意識せず、ラクロスに打ち込んでいました。母たちもそんな私のことを何も言わずに見守ってくれていました。
古尾谷:事業を継ぐことを考えたのは、20代の時に家の手伝いをして店頭に立った時のことでした。当時、お店を訪れるのは50代~60代のがん患者の方が多く、病院では処置できないと言われて漢方に辿り着いた方もいらっしゃいました。まだ人生経験が浅かった私は、そんなお客様たちにどんな風に声を掛けて良いのか分からず、戸惑ってしまい......。その時に、このお店の大切さを実感し、これからも残していかなくてはならないと気づきました。
与儀:始まりはお店にお手伝いに入ったことなのですね。私も最初はフロントスタッフとしてお店に立つところからスタートしました。私が小さな頃から知っているお客様たちにも温かく見守っていただき、お客様ご自身から教わって成長できたこともたくさんあります。その後は少しずつ経験を重ね、ヘアメイクなど責任のある仕事を任せてもらえるようになりました。
現代の働く女性たちに向けたご提案
古尾谷:漢方の世界では、目に見えない「気・血・水」を人間の生命活動に必要な3要素と捉えているのですが、与儀さんが携わる美容の世界では髪型やメイクの色合いなど目に見える要素を扱っていますよね。季節に合わせた色合いやトレンドによってスタイルを変えられるところも、美容の面白さですよね。漢方の世界でも、漢方理論に基づき、季節ごとに処方を変えたりしています。
与儀:漢方も季節によって処方が変わるのですね。私たちは、カウンセリングをする時はまずはお客様のご要望をお聞きし、シチュエーションや季節に応じてお似合いのスタイルをご提案しています。また、現在は昔に比べて働く女性が増えたこともあり、「時短」が美容のキーワードの一つにもなっています。手早く簡単にヘアケアを済ませることができるアイテムも増えてきましたよね。漢方の世界では、そういったニーズの変化はありますか?
古尾谷:忙しい女性が増えたので、手軽に摂取しやすい新しい漢方を作っています。病気の予防という観点で勧めていることもあり、日常に入りやすいお茶の形で提案させていただいたり。忙しい現代の女性たちがこれを飲んだら元気になれるという商品を開発しています。楽しい気持ちで漢方を選んでいただけるように工夫しました。
与儀:以前、与儀美容室とのコラボでオリジナルのブレンド茶を作っていただいたことがありましたね。成人式の時に新成人の方たちにお配りしたら大好評でした!
古尾谷:若い世代の方に手に取っていただけて嬉しいです。20歳くらいの方々にとって、予防医学はあまり興味のない分野かもしれません。しかし、早いうちから漢方の存在を知っていただくだけでも、今後の体の変化に備えることができると思います。
伝統を守りながら、新たなスタイルを取り入れる
与儀:従来の漢方のイメージは、若い女性たちにとって少し敷居が高いものでしたが、台所漢方の店舗はカフェのように明るく洗練された雰囲気ですよね。漢方のことをあまり知らない女性でも入りやすいと思います。
古尾谷:古来より伝わる漢方の理論や、伝統的な材料を用いることは今も昔も変わらずに行っているのですが、現代の女性たちのニーズやライフスタイルを考慮し、より手に取りやすいイメージを作っています。ファッション感覚で漢方を使っていただくのも大歓迎です。内側からもっと綺麗になりたい、若返りたいと考えている女性が漢方に興味を持ってくださることも増えてきたので、従来のイメージを払拭し、気軽に使っていただける漢方を目指しています。
与儀:長く築き上げてきたイメージを、現代のニーズに合わせて変化させていますね。与儀美容室も伝統的なイメージが根強いのですが、インターネットの普及に伴い、幅広い世代の女性、これまで接点のなかったお客様から関心を持っていただく機会も増えています。より幅広い層の方に安心してお任せいただくためにも、新たにSNSなどを宣伝ツールとして活用し、お店の情報や写真を積極的に配信していこうと考えています。
古尾谷:伝統的な美容室が新しい改革をしていくのは、パワーのいることだと思います。素晴らしいですね。
与儀:ブライダルではオーセンティックなスタイル以外にも、その時代によって流行があります。2016年にオープンのアメリカ西海岸をイメージした開放的なウェディングを得意とする青山の結婚式場THINGSに与儀美容室も参画いたしました。ここでは、ホテルウエディングとは全く違う軽やかでカジュアルなヘアスタイルのリクエストが圧倒的。そういった声にお応えするためにSNSで絶大な人気を誇るスタイリストをテクニカルコーチに迎え半年間研修を行ったこともあります。老舗の伝統を守りながら新たな技術を取り入れていく過程で困難にぶつかることもありますが、今までよりも幅広い層のお客様にご満足いただけうようになりました。躓きを恐れずに進んでいくこと。これは、母からの教えでもあります。
(後編へ続く)
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